「普通の高校生が、なぜ人を刺すのか
――トクリュウと子どもたちのこと
2026年5月14日、栃木県上三川町で、衝撃的な事件が起きました。
午前9時すぎ、住宅に侵入し、住人の富山英子さんを凶器で突き刺して殺害した疑いで、16歳の少年4人が逮捕されました。
目的は、金品を盗むことだったといいます。
なのに、人が死んだ。
逮捕された4人は、全員が16歳の高校生、または自称高校生でした。
事件への関与が疑われているのは、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」です。
少年の一人は「夫婦に頼まれた」と供述しており、実行役の中には、事件当日に初めて顔を合わせたメンバーもいたことが明らかになっています。
トクリュウとは、何なのか
トクリュウという犯罪の形は、従来の暴力団とは根本的に違います。
メンバー間の人間関係が希薄で、流動的であることが最大の特徴で、多くのメンバーは互いに顔を合わせることなく、匿名化されたデジタル通信だけで繋がっています。
首謀者は、末端の実行役を「使い捨て」として扱います。
末端の実行役が逮捕されても、組織の中核は無傷のまま、SNSで新たな実行役を補充して犯行を続けることができる仕組みです。
なぜ、子どもたちが巻き込まれるのか
SNSやメッセージアプリで「高額・簡単なバイト」として誘い込み、少年を実行役に使って切り捨てる手口が横行しています。
今回の少年たちも、同級生からの誘いというかたちで巻き込まれた典型的なケースです。
法務省が2025年に実施した調査では、少年院在院者の3割強が闇バイト経験ありと判明。そのうち約4割が後悔なし、2割弱が犯罪行為と認識していなかったと回答しています。
ここが、私がいちばん気になるところです。
犯罪だと思っていなかった。
25年、子どもたちを見てきた私が感じること
私は塾の先生として、また以前はサッカーコーチとして、長年にわたって子どもたちと関わってきました。
子どもは、「これは悪いことだ」とわかっていて非行に走るケースより、なんとなく流されて、気づいたら取り返しのつかない場所に立っていたというケースの方が、はるかに多い。
友達に誘われた。 断れなかった。 お金がほしかった。 そのくらいの気持ちで、人生が終わる。
今回の事件も、きっかけは「ちょっとしたアルバイト感覚」だったのかもしれません。
でも、現場で住人に出くわしたとき、少年たちは凶器を使った。
金品が目的の強盗が、なぜ殺人になるのか。
それは、「判断する力」が育っていなかったからではないかと、私は思っています。
「その場でどう判断するか」を育てる
学力を伸ばすことは、もちろん塾の仕事です。
でも私が25年間、子どもたちに伝えてきたことの中には、もうひとつあります。
自分の頭で考え、自分で判断できる人間になってほしい、ということです。
誰かに言われたからやった。 みんながやっていたから。 断れなかった。
そういう言葉が、事件のたびに聞こえてきます。
「考える力」「判断する力」「断る力」。
これは、試験には出ません。
でも、人生で最も必要な力だと、私はずっと思っています。
そして、同じような事件が二度と起きないよう、私も子どもたちと向き合い続けたいと思います。