「人は変えられない」 ―― それでも、塾長は待ち続ける ――
子どもたちを見ていると、つくづく思うことがある。
「人は、なかなか変われない生き物なんだな」と。
習慣は、まるで川の流れのように
食習慣を変えようとしたことがあるだろうか。
甘いものをやめようと決意する。
揚げ物を控えようと誓う。
でも、気づけばいつものコンビニで、いつものスナック菓子を手に取っている。
夜更かしをやめようと思う。
スマホを0時前に置こうと決める。
でも、布団の中でまた画面を開いている。
これは意志の弱さではない。
人間という生き物が持つ、ごく自然な姿だと私は思っている。
習慣とは、長い時間をかけて刻まれた「脳の溝」のようなものだ。
水は必ず、低いところへ流れる。
その溝を変えるのは、並大抵のことではない。
25年間、子どもたちを見てきて気づいたこと
塾の現場でも、まったく同じことが起きる。
「毎日勉強する」と決めた子が、3日後には元に戻っている。
「ゲームは1時間まで」と約束した子が、気づけば3時間向き合っている。
最初は「意志が弱いな」と思っていた時期もあった。
でも25年間、子どもたちと向き合い続けてきて、わかったことがある。
それは、責めても変わらないということだ。
叱って変わるなら、誰も苦労しない。
習慣を変えるのに必要なのは、叱責ではなく、仕組みと時間だ。
「変えられない」を責めるより、「変わり方」を一緒に考える
私自身、若い頃は食生活が乱れていた時期がある。
50代になって体のサインが出てから、はじめて本気で向き合った。
砂糖、植物油、白いパン……。
「わかっているのにやめられない」という感覚は、私自身も経験してきた。
だから保護者の方が「うちの子、何度言っても変わらなくて……」と打ち明けてくださるとき、
私は決して「お子さんの意志が弱い」とは思わない。
変わろうとしている、そのこと自体がすでに尊いと感じる。
習慣を変えるには、小さな一歩でいい。
毎日1ページだけ。
寝る30分前だけスマホを置く。
夕飯の白米をほんの少し減らす。
大きな変革は、小さな積み重ねの先にしか生まれない。
それでも、人は変われる
「人は変えられない」と書いてきた。
でも、正確にはこうだと思う。
「他人が変えることはできない。でも、本人は変われる」
塾長として私にできることは、子どもを変えることではない。
「変わりたい」という気持ちが芽生えたとき、その背中をそっと押すことだ。
サッカーの指導でも同じだった。
コーチが怒鳴っても、選手の足は速くならない。
選手自身が「もっとうまくなりたい」と思ったとき、人は変わる。
親御さん、どうか焦らないでほしい。
お子さんが変われないのではなく、まだその「タイミング」が来ていないだけかもしれない。
そのタイミングが来たとき、そっと寄り添える大人が近くにいること。
それが、何より大切なことだと、25年の経験が教えてくれている。