過去の生徒について⑥
―“問題児”と呼ばれた少年が教えてくれた、心の奥のサイン―
これまで多くの生徒たちと関わってきましたが、
中には“手のかかる子”と呼ばれるような子もいました。
けれど、そうした子たちほど、心の奥に深い思いを抱えているものです。
今回は、そんな一人の男の子の話をしたいと思います。
プロを目指すほどの才能を持つ少年
その子が塾に来たのは、中学3年生のとき。
母子家庭で、お母さまと二人暮らしをしていました。
ゴルフではプロを目指せるほどの実力を持ち、
勉強も学校の中では上位に入るような子でした。
一見、何も問題のないように見える少年。
でも、その裏には、思春期ならではの心の揺れがありました。
塾を“隠れ家”にしていた日々
家に帰ると、お母さんからいろいろ言われるのが嫌で、
塾を“逃げ場”のようにして過ごしていました。
しかし、勉強をしているわけではなく、
自習室でスマホのサッカーゲームをして、
仲間たちと盛り上がっている日もありました。
ある日、あまりにも騒がしかったので、
ついに私も怒って、「もう帰りなさい!」と強く言いました。
その場がピリッと張り詰め、
お互いの思いがぶつかり合うような時間でした。
“ぶつかり合い”の中で見えたもの
別の日、授業中にふざけて、
塾の配布用ボールペンが入った袋を投げ、
中身をまき散らしたことがありました。
思わず私も感情的になり、体を張って止めに入ったほどです。
学校でもいつも先生に怒られていたそうで、
周囲からは「問題児」と見られていました。
けれど、私は思っていました。
この子は、本当は優しい心を持っている。
ただ、その気持ちの出し方がわからないだけだと。
ある夜に、私が塾のチラシを配るんだと言うと
その友達と数人で、手分けして配ってあげるよ!と手伝ってくれた事もありました。
そして、合格の日
受験が近づくにつれ、少しずつ彼の表情が変わっていきました。
真剣に勉強に向かう姿も増え、
やがて県立高校に見事合格。
そのときの笑顔は、
いつもの強がりや反抗心のない、
心からの笑顔でした。
心でつながる指導を
子どもたちは、時に反抗的で、理解しにくい行動をとります。
けれど、それは「助けてほしい」「気づいてほしい」という
心のサインでもあります。
「問題児」と呼ばれる子ほど、
実は一番、人の温かさを求めているのかもしれません。
彼が塾で見せてくれた姿は、
“心で向き合う教育”の大切さを、私にもう一度教えてくれました。
歩実塾より
塾は、ただ勉強を教える場所ではありません。
子どもが自分を見つめ直し、心を立て直せる“居場所”でありたいと思っています。
怒ることも、ぶつかることも、
それは“心がつながっている証”です。
そして、そんな時間を経て、子どもたちは少しずつ強く、優しくなっていくのです。