過去の生徒について⑧
― 小学5年生の女の子と「本当の希望」 ―
これまで関わってきた生徒たちのことを、少しずつ書いていこうと思います。
今日は、小学5年生の終わり頃に入塾してくれた、ある女の子の話です。
彼女は、難関といわれる県立の中高一貫校を目指していました。
この受験は、小学校の成績が良く、上位にいる子でも簡単ではありません。
最初に会ったとき、
「本人が行きたいと思っているんだな」
そう感じていました。
けれど、指導を進めていくうちに、少しずつ違和感を覚え始めました。
勉強が「つらいもの」に変わった瞬間
基礎的な問題から、応用力を強く求められる問題へ。
「自分で考える力」が必要になってくると、だんだんと表情が変わっていきました。
分からない。
考えても答えが出ない。
そんな時間が増えるにつれ、
「勉強が嫌だ」という気持ちが、少しずつ心を占めていきました。
授業中、悔しくて、苦しくて、涙を流すこともありました。
その姿を見ながら、私はずっと考えていました。
——この受験は、本当にこの子の望みなのだろうか。
見えてきた「本当の理由」
結果として、県立の中高一貫校は不合格でした。
しかし、その後に受験した私立中学には、見事合格することができました。
合格の報告を聞いたとき、私は少し安心しました。
それと同時に、はっきりと感じたことがあります。
このケースは、決して珍しくありません。
「本人が行きたい」のではなく、
「周りに流されて、行きたい気がしている」。
親の期待、周囲の評価、世間の空気。
それらが重なり合って、知らないうちに
子どもの本音が見えなくなってしまうことがあります。
大切なのは「本人が進む力」
受験そのものが悪いわけではありません。
高い目標を持つことも、素晴らしいことです。
でも一番大切なのは、
「本人が自分の足で進んでいるかどうか」。
途中で苦しくなったとき、
「やめたい」と言える環境があるか。
「別の道もある」と伝えてあげられるか。
周りが進路を決めるのではなく、
周りが支え、見守り、
本人が自分で選び取れる環境をつくってあげること。
それが、遠回りに見えて、実は一番強い力になると、私は思っています。
この子は、違う道を選びました。
そして今、自分のペースで前に進んでいます。
合格・不合格だけでは見えないもの。
その奥にある「心の動き」に、これからも向き合っていきたいと思います。