過去の生徒について③
―「この塾で良かったです」その一言に込められた想い―
これまでに関わってきた生徒たちの中で、
今でも心に残っている一人の女の子がいます。
彼女が塾に入ってきたのは、中学2年生の頃。
母子家庭でお母さんと二人暮らしでした。
お母さんはとても優しく、厳しく勉強を強いるタイプではありません。
彼女自身も、どちらかといえば自由で、
友達や彼氏と過ごす時間を楽しむような、明るい子でした。
言い合いになった日のこと
ある日、彼女と少し言い合いになったことがありました。
私が思わず口にした言葉。
「そんなにこの塾が嫌なら、隣の塾に行けばいいよ。」
今思えば、少し強い言葉だったかもしれません。
でもそのときは、本気でぶつかっていたからこそ出た言葉でした。
彼女も負けずに言い返してきて、
お互いに心の中で“もやもや”を抱えたまま時間が過ぎていきました。
女の子なのに? 工業高校を志望
中学3年生になってから、彼女は突然、目を輝かせて言いました。
「私、工業高校に行きたいんです!」
正直、少し驚きました。
当時はまだ、工業高校に進学する女子生徒が学年で1〜2人ほどの時代。
でも、彼女の表情には迷いがありませんでした。
「機械とか、ものづくりに興味がある」
その一言に、彼女の芯の強さを感じました。
それからの彼女は本当に変わりました。
放課後は毎日のように塾に来て、授業がない日も自習。
誰よりも真剣に机に向かい、努力を続けていました。
合格、そして“あの手紙”
受験当日も、堂々とした姿で挑み、見事に合格。
その報告を聞いたとき、心の底から嬉しかったのを覚えています。
そして、卒業の日。
彼女から一通の手紙をもらいました。
そこには、こう書かれていました。
「あの時、塾長に“この塾が嫌なら、隣の塾に行けばいい」って言われたけど、
やっぱり、この塾で良かったです。
その一文を読んだ瞬間、胸が熱くなりました。
本気でぶつかり合ったあの日が、
彼女にとって“成長のきっかけ”になっていたのかもしれません。
「信じる」と「待つ」
この子の姿を通して、改めて感じたことがあります。
子どもは、大人が思うよりもずっと強い。
ただ、その強さが芽を出すまでには、時間がかかることもあります。
信じて、待つこと。
ときにはぶつかっても、見放さないこと。
その積み重ねが、子どもたちの“心の成長”につながっていくのだと思います。
歩実塾より
歩実塾では、勉強を教えるだけでなく、
子どもたち一人ひとりの「心の成長」を大切にしています。
「叱る」よりも「認める」ことで、
自分を信じられる力を育てていく。
そうして、一歩ずつ成長していく姿を見ることが、
何よりの喜びです。