江戸の食卓から学ぶ「悪食」と健康─杉田玄白が伝えた真の教え
私たちは毎日、何気なく食べています。
「おいしい」「安い」「手軽」といった理由で選ぶことが多いですが、
本当に身体のためになっている食べ方をしているでしょうか?
江戸時代にも、実は“食の乱れ”が原因で病に苦しんだ人々がいました。
中でも、将軍の病と向き合った医師・杉田玄白の言葉には、
現代を生きる私たちに通じる「食と健康の本質」が込められています。
■ 「悪食」とは何か──杉田玄白が説いた“食の慎み”
杉田玄白は、日本に初めて西洋医学を本格的に広めた医師です。
彼が残した言葉に「悪食(あくじき)」というものがあります。
これは「毒のあるもの」や「腐ったもの」という意味ではなく、
**“体の欲ではなく、心の欲に従って食べること”**を指していました。
つまり「お腹がすいたから食べる」のではなく、
「なんとなく食べたい」「贅沢したい」といった心の欲望に負けて食べることこそが、
病のもとだというのです。
■ 将軍の病に学ぶ「食の乱れ」
江戸の将軍たちは、まさに“贅沢の象徴”でした。
一汁三菜どころか、山海の珍味がずらりと並び、
食べ過ぎ・飲み過ぎが日常だったといわれています。
実際、第8代将軍・徳川吉宗以降、糖尿病や痛風などの生活習慣病に悩まされた将軍も多く、
中には若くして病に倒れた者もいました。
杉田玄白は、そんな時代の流れを見ながら、
「贅沢な食事は、体を弱くする」
「腹八分にして、自然に従って生きよ」
と説いています。
現代で言うところの“生活リズム”“栄養バランス”“食の節度”を、
江戸の時代にすでに見抜いていたのです。
■ 現代の私たちへ──“おいしい”の先にあるもの
現代社会でも、私たちは食の誘惑に囲まれています。
コンビニやファストフード、SNSで映えるグルメ…。
便利で楽しい一方で、身体は静かに悲鳴を上げていることもあります。
杉田玄白の「悪食」の教えは、
単なる“節制”ではなく、自分を大切にする生き方なのだと思います。
「本当に自分の身体が求めているのは何か?」
一度立ち止まり、食と向き合う時間を持つことが、
健康だけでなく、心の豊かさにもつながっていくのではないでしょうか。
【まとめ】
江戸の将軍が贅沢に溺れて病に苦しんだように、
現代の私たちもまた「便利さ」という贅沢の中で生きています。
杉田玄白が残した「悪食」という言葉は、
今の時代にも通じる“生き方の教え”として響きます。
食べることは、生きること。
その一口に、未来への選択があるのかもしれません。